2016年 ハイライト

2016年はHARIBAN AWARD三年目の年でした。この画期的な賞は、主催者が、選ばれた写真作家一名に、 京都の便利堂コロタイプ工房の熟練の職人ととも制作をするという機会を提供するというものです。審査員はPeter Barberie(フィラデルフィア美術館キュレーター)、Marc Feustel(eyecurious.comの創設者でありキュレーター、執筆家)、竹内万里子(キュレーター、京都造形芸術大学助教授)、イトウツヨシ(Project Basho/ONWARDプログラムディレクター)でした。 開催2年目である2015年の圧倒的な成功もあり、コンペティションには世界中の写真作家からの応募が寄せられ、コンペティションは質と人気共に大きく成長しました。

受賞者

最優秀賞

クラウディオ・シルヴァーノ [www.clausilvano.com]
クラウディオ・シルヴァーノは、ブラジルのアマゾンで生まれ育った。現在はフランス在住し、パリ・ソルボンヌ大学にて美術史の修士を取得中。彼の受賞作品は、現在作成中のシリーズ ‘Campo Aberto’(ポルトガル語で ”Open Field”という意味)からの抜粋である。2012年にブラジルからヨーロッパへ移住した後に製作されたこのシリーズは、転移と所属の概念を模索するものである。
Claudio Silvano

Claudio Silvano

審査員特別賞

Michael Vahrenwald(マイケル・バレンワード): マイケル・バレンワードは、ニューヨーク在住の写真家である。彼の作品は、ニューヨークの Whitney Museum of American Artと、カンザスシティーの Nerman Museum of Contemporary Art に所蔵されている。彼はROMAN NVMERALSの共同設立者でもある。

Michael Vahrenwald

Michael Vahrenwald

鈴木麻弓(すずきまゆみ): 鈴木は宮城県女川に生まれ、現在は、神奈川県の逗子に居を構えている。日本大学芸術学部卒業。

Mayumi Suzuki

Mayumi Suzuki

Claudio Nolasco(クラウディオ・ノラスコ): クラウディオ・ノラスコはドミニカ共和国に生まれ、現在は、マサチューセッツ州のアムハーストに居住。彼の作品は、アメリカ合衆国とヨーロッパで広く展示、出版されてきた。彼の作品「Two Rivers」をフィーチャーした本は、2016年、国際写真フェスティバルであるAthens Photo festival: Photobook exhibitionで最終選考に残った。

Claudio Nolasco

Claudio Nolasco

佳作

  • Lea Habourdin
  • Maria Inglessis
  • Miho Kajioka
  • Natalia Kopkina
  • Maria do Mar Rego
  • Marie Passa
  • Joanna Piotrowska

工房賞

  • Teri Havens


Joanna Piotrowska

Joanna Piotrowska

審査員からの講評

Peter Barberie (ピーター・バーベリー)– フィラデルフィア美術館キュレーター

私は長い間コロタイプ技法で印刷された作品を素晴らしいと思い続けてきました。コロタイプは、1856年に発明されて以来、多くの重要な作品に使われてきました。フィラデルフィア美術館のコレクションの中にも、私を魅了するコロタイプ作品があります。友人でありフィラデルフィアで大切なクリエイティブなスポットとなっているProject Bashoの創設者であるイトウツヨシが、便利堂コロタイプ工房の職人技術のすばらしさについて教えてくれた時、私は最高レベルのコロタイプ印刷に精魂を傾ける職人たちについて学ぶことに、胸が高鳴るのを感じました。
HARIBAN AWARDは、真剣な写真家たちに、まるで魔法のような高い技術で印刷された自身の作品を、新しい観客に見せるチャンスを与えてくれます。そしてこのアワードはコロタイプと複製印刷の職人技術の重要性の認識を高めてくれます。本年度の応募作は非常に心動かされるものばかりでした。これまで出会ったことのなかった世界各地からの写真家たちの作品に出合うのは、身震いするような体験でした。そして彼らのキャリアを今後も見守っていきたいと思います。現代のアーティストの作品を守り、そして価値がつけられないほど貴重なコロタイプ技法を守り続ける便利堂に賞賛を送ります。

Marc Feustel(マーク・フューステル) – eyecurious.comの創設者でありキュレーター、執筆家

HARIBAN AWARDによって便利堂は世界に向かってそのドアを開きました。本年度の応募者の国籍、応募写真のスタイルやコンセプトの多様性を目の当たりにして、世界中の写真家たちが、自身の作品の物理的な形に価値を置いていることが、あらためてわかりました。第1回と第2回の最優秀賞受賞者であるアヴォイスカ・ヴァン・デル・モレンとアントニー・ケーンズは、このアワードで得られるものがどれほど大きいかを示してくれました。彼らとのコラボレーションによりコロタイプは、その印刷技術そのものの新しい可能性を見出すと同時に、彼らの作品を新しい方向に導いたのです。多くの写真コンテストであふれているこの時代に、HARIBAN AWARDの強みは、アーティストと便利堂の熟練職人が、純粋な共同作業と実験的な工程を共にする結果を導くことができる、という点です。それは、しばしば孤独な領域である写真の世界では、稀有な機会であると言えます。

竹内万里子 – キュレーター、京都造形芸術大学助教授

想像していた以上に力作が多く、審査にあたっては大変充実した時間を過ごさせて頂きました。ただ個人的に気になったこととしては、メディアとしての写真の可能性に挑戦するよりも、いささか保守的とすらいえる審美的な傾向の強い作品が多かったことがあります。もし応募者の方々がコロタイプ印刷ということを意識するあまりそうなっているのだとしたら、それは大変残念なことではないかと思います。どのような形式のものであれ、あらゆるすぐれた写真には、今日の社会や人間のありようを深く考えさせる力があります。今日の世界へそうやって大胆に切り込んだ作品がコロタイプ印刷と出会ったときにこそ、思いもかけぬ火花が生じ、多くの人の心を揺さぶることができるのではないでしょうか。よい意味で見る側の期待を裏切るような、そうした作品が今後さらに増えることを願ってやみません。

最優秀賞者とのインタビュー


2016年の審査員は、ブラジルの写真家Claudio Silvano(クラウディオ・シルヴァーノ)さんの作品を最優秀賞に選びました。シルヴァーノさんは、京都で二週間、コロタイプの熟練技術者たちと過ごし、そこで作成された作品は2017年4月に開催されるKyotographie(京都国際写真祭)のアソシエイトプログラムとして展示されます。ビデオでは、シルヴァーノさんが彼の便利堂アトリエでの作品作りの体験を語っています。