2015年 ハイライト

昨年からの成功を得て2015年、Hariban Awardは2周年を迎えました。当コンテストは、選ばれた写真作家一名に、 京都にある便利堂のコロタイプ工房で二週間、熟練の職人と共に作品制作をする機会を提供する、という画期的なものです。本年度のコンテストには、世界中から昨年比およそ二倍もの応募が寄せられ、各作品のレベルは高く、審査員にとっても非常に困難を極める審査となりました。今年の審査員は、ギャラリーオーナーのマイケル・ホッペン、キュレーターのアマンダ・マドックス、KYOTOGRAPHIEの共同創始者で事務局長であるルシール・レイボーズ、そしてProject Basho/ONWARDのプログラムディレクターのイトウツヨシとなっています。

受賞者

最優秀賞

Antony Cairns(アントニー・ケーンズ)[www.antony-cairns.co.uk]
ロンドンのイーストエンドに生まれる。15歳の頃から写真を始め、彼が生まれた都市を基本テーマに撮り続けている。1990年代の終わりにかけてロンドン大学で伝統的な写真技法を学んだ彼の写真作品は、化学薬品を用いた技法に深く根ざしている。撮影はもっぱらモノクロフィルムで行われ、彼はすべての作品を自ら現像している。2007年に Archive of Modern Conflict に関わるようになってから、彼の写真作品は、そのアーカイブが所有する希少で興味深い写真コレクションからも影響を受けている。
Antony Cains

Antony Cains

審査員特別賞

Irene Nelson(イレーネ・ネルソン): イレーネ・ネルソンは、版画やペインティングなどの多様な表現手段において、写真を触媒として自身のユニークな考えを表現する作家である。2009年よりフォトエッチングや絵画を発表してきた。ニューヨーク州出身で、現在はカリフォルニア州在住。

Irene Nelson

Irene Nelson

関薫(せき・かおる): 1979年、東京生まれ。2003年に、東京造形大学を卒業。2013年からは、サードディストリクトギャラリー(東京)の運営メンバーとなり、同年にはNiseacacia Processより写真集「RADIANCE」を出版している。

Kaoru Seki

Kaoru Seki

Dan Winters(ダン・ウィンタース): ダン・ウィンターズは、セレブリティーのポートレートや、サイエンスフォト、スケッチ、そして報道写真な作品作りで広く評価されている。養蜂家でもあり、テキサス州オースティン郊外のスタジオに小さな養蜂場を持っている。彼の作品はmyriad magazinesに定期的に取り上げられており、1998年にはmagazine photography の the Alfred Eisenstaedt award、2003年にはWorld Press award など、数多くの賞も受賞している。

Dan Winters

Dan Winters

佳作

  • Albarran Cabrera
  • Tiane Doan na Champassal
  • Cedric Friggeri
  • Dana Fritz
  • Manu Jougla
  • Marcia Micheal
  • David Shannon-Lier
  • Colin Stearns
  • Paul Thulin
  • 山縣 勉

工房賞

  • Olga Rook

Cedric Friggeri

Cedric Friggeri

審査員からの講評

Michael Hoppen(マイケル・ホッペン)– Michael Hoppen Galleryオーナー

写真芸術は、iphoneの大挙によって、あたかもとても簡単なもののようになりました。そんな時、私たちが、真剣に取り組んでいるアーティーストの手作りの作品を見ると、きちんとしたカメラで、作品の主導権を持ちながら作品を制作することができる人たちの能力には、大きな違いがあることに気がつき、とても爽快な気持ちになります。
便利堂は、このイメージ制作を、もう一段階上のステージに引き上げる機会を提供しています。HARIBAN AWARDの応募作品の質がとても高いため、多くの写真家やアーティストがこの賞から、インスピレーションを得るようになると信じています。写真の世界は、ほぼ完全にデジタル化の方向に向かっている中で、この伝統的なイメージ作りの手法が、新しい現代アーティストに提供され、手渡されることはとても重要なことです。便利堂の専門家の助けを借りてコロタイプの方法を自分で実際に使用して初めて、アーティストは、自分の作品の仕上がりを変える為に、他にどんな選択肢があるのかを真に発見することが出来るでしょう。コロタイプは、他のどんな手法とも違っています。HARIBAN AWARDは、そのユニークな方法を介して、異なる文化同士がお互いを知り合うことができる、本当に素晴らしい機会です。

Amanda Maddox(アマンダ・マドックス)– J. Paul Getty Museumアシスタントキュレーター

アルフォンス・ポワトゥヴァンが1856年に発明した印刷法を行っている、世界でも数少ない工房の一つである便利堂には、数人の熟練印刷職人が務めています。 彼ら印刷工は作家と、あるいは作家の残した作品と直接に関わりながら、また、高品質のポストカードやその他のプリントを作成しながら、濱谷浩、森村泰昌など多様なアーティストの肖像写真を制作してきました。
熟練工である便利堂の職人は、その伝統的なやり方にとどまらず、 実験的アプローチ(そのうちの一つに、アサヒビールが関わったものがある)に関しても完璧にこなして来ました。 HARIBAN AWARDを開催することにより、便利堂は、より広い国際的観衆にコロタイプ印刷を楽しむことを促し始めたばかりでなく、 かつて人気だった印刷方法が実際に、確実に行われ続けるよう、貢献しています。

Lucille Reyboz(ルシール・レイボーズ)– KYOTOGRAPHIE 共同創始者、事務局長

2012年に京都に引っ越した時、コロタイププリントの、繊細なグラデーション、微妙なテクスチャー、深い黒、そして、ユニークな光沢にとても感銘を受けました。もっと多くのアーティストたちに試して欲しいと、切に思ったのです。私とユウスケ(仲西祐介さん)がKYOTOGRAPHIE(京都国際写真祭)を創始した時、私たちは第一回目からコロタイプを私たちのプログラムに取り入れることが必要だと感じました。コロタイプ印刷は、写真の歴史において重要な位置を占めますし、また、私が今まで見た中でも最高の写真にとって、欠かせない媒体なのです。私は、便利堂HARIBAN AWARDの審査員を務めさせていただいたことを光栄に思います。また、HARIBAN AWARDの受賞作品を私たちの展覧会に関連プログラムとして、あるいはメインプログラムとして展示できることを誇りに思います。コロタイプの技術は、私たちの祭典のビジョンと密接に関わっています。私たちは、技術革新、多様性とクラフトマンシップを奨励し、新しいものと古いものを結びつけるために努力しています。 便利堂とHARIBAN AWARDは、写真界に何らかを与え、コロタイプの手法は、写真家達に、彼らの作品の新しい側面を模索させるでしょう。そして将来、写真家たちがの、コロタイプの様な媒体を模索する情熱を呼び起こすことを期待しています。

最優秀賞者とのインタビュー


イギリス出身のAntony Cairns(アントニー・ケインズ)さんが2015年のHARIBAN AWARDの最優秀賞に輝きました。このビデオでは、ケインズさんが、京都でコロタイプの熟練技術者たちと過ごした素晴らしい二週間の体験と共に、彼の写真のスタイルについて語っています。その結果として生まれた作品は、2016年4月に開催されたKyotographie(京都国際写真祭)においてアソシエイトプログラムとして展示されました。