2017年 ハイライト

2017年はHARIBAN AWARD三年目の年でした。この画期的な賞は、主催者が、選ばれた写真作家一名に、 京都の便利堂コロタイプ工房の熟練の職人ととも制作をするという機会を提供するというものです。審査員はThyago Nogueira(フォトグラファー、キュレーター、ZUM magazine エディター)、榮榮 ( ロンロン ) & 映里 ( インリ ) /三影堂撮影芸術中心( ree Shadows)設立者、Tristan Lund(キュレーター)、マイケル・ファミゲッティ/Aperture Magazine エディター)でした。

受賞者

最優秀賞

スティーブン・ギル [www.stephengill.co.uk]

1971 年、イギリス・ブリストル生まれ。幼少時に父親の影響で写真をはじめ、10 代は地元の写真ス タジオで家族写真の撮影や古い写真の修復を手伝う。スピード現像ラボに勤務した後、フィルトンカ

レッジの基礎コースで写真とアートを学ぶ。ロンドンのマグナムフォトでアシスタントを務め、写真家とし て独立。以来、日常をユニークな視点で切りとった新しい表現を切り拓いてきた。代表作に、写真の 上から実際の花や植物を載せて撮影した「Hackney Flowers」、世界各国のトイレに設置されたトイレッ トペーパーの端を折ったものを収集して撮った「Anonymous Origami」、目立つように蛍光色の服を着 ている鉄道や町の工事現場の作業員が、むしろ景色の中に馴染んでしまっているという矛盾に着目し た「Invisible」などがある。長く住んだイーストロンドンを離れ、現在はスウェーデンを拠点に活動中。

© Stephen Gill, Night Procession 2014-2017

審査員特別賞

Paul Cupido(ポール・キュピドー): 自己内面へと向かう親密な旅  www.paulcupido.nl

© Paul Cupido, from Searching for Mu

鈴木麻弓(すずきまゆみ): ユニークで個性的な作品は、写真の伝統的な理解である複製性や反復性とその意味の理解から逸脱する。www.brunoroels.com

© Bruno V. Roels, Such A Night

Leticia Ramos(レティシア・ラモス): 極めてシンプルな、しかし高度に実験的な写真表現によって深く複雑な素材表現を実現した。www.leticiaramos.com.br

© Leticia Ramos, METEORITO

Carly Steinbrunn(カーリー・ステイブラウン): さまざまな科学的アプローチと写真の歴史をとおして、私たちの世界の意味と価値の構造を探る。 www.carlysteinbrunn.com

©Carly Steinbrunn, Geological curiosity

佳作

  • Edgar Martins
  • Laura Pannack
  • Mariya Kozhanova
  • Scheltens & Abbenes
  • Michael Vahrenwald
  • Philip Le Page
  • Zeng Ge

工房賞

  • Atsunobu Kohira


©Laura Pannack

審査員からの講評

Thyago Nogueira(フォトグラファー、キュレーター、ZUM magazine エディター)

写真の歴史というのは、世界を二次元的な面にすることを目指しながら、いろいろな技術の発明者
たちが試行錯誤を繰り広げてきた歴史ともいえます。そのような技術の理解、そして必要となるデー タの意識的な使用は、最も永続的かつ興味深い画像を形成するだけでなく、創造的な思考が可 能性を推し進めることで、視覚的な新しいボキャブラリーを作り上げることを可能にしてきました。現 代写真においても、歴史的な事項が必然的に現在の写真言語に組み込まなければならず、そのこ とに関して便利堂とその職人は架け橋になるはずです。ハリバンアワードを審査する中で、コロタイ プを深く理解しているアーティストたちが多く存在するのを知って驚きました。

榮榮 ( ロンロン ) & 映里 ( インリ ) /三影堂撮影芸術中心( Three Shadows)設立者

ハリバンアワードの審査員として参加させていただき大変光栄に思います。応募作品は便利堂でのコ ロタイプ制作を叶えるために世界中から送られてきた作品で、ほぼ全ての応募がモノクロ写真でした が、それぞれ独自性があり、また表現豊かな作品ばかりでした。私事ではありますが、今年 6 月に 便利堂でコロタイプの作品集を出版しました。私たちが創設した北京三影堂撮影芸術中心が今年 10 周年を迎え、その記念に便利堂で作品集を作るという幸運に恵まれたのですが、正直に言うとそ の制作工程は予想以上に困難なものでした。しかしながら、職人達の経験と知恵の結晶である便 利堂の技法は、時代の変化に甘んずることなく現在もなお高め続けられていて、彼らの別次元とも言 えるほどの高い感性によって生み出される作品は、まさに時代を超越した感動をもたらしてくれました。

トリスタン・ランド/キュレーター

今年のハリバンアワードへ応募したすべての人々に感謝し、また応募作品の全部をレビューする特権 を得ることができ大変光栄に思います。この賞は熟練した職人とのコラボレーションを可能にすることか ら、写真の、一時的な写真画像の意をこえて、写真としての永続性を拡張するような作家には、とて もよい機会になるはずです。要するに、写真のプリントは、彼らの作業の中で不可欠な部分でなけれ ばならないのです。このことから、私は審査のプロセスにおいて 2 つのことを念頭に置いて挑みました。 アーティストと職人とが刺激的なコラボレーションができるのか、そして、その応募作品をコロタイププリ ントとして見てみたいかということです。それを踏まえ、スティーブン・ギルが本年のアワードを受賞した ことを私は嬉しく思っています。彼は芸術と写真という媒体をとおしてこの世界を理解したいという探求 精神があり、プリントに対して並々ならぬ愛情があると思います。彼が応募した作品は既存のルール に即さないタイプのアーティストによって生み出されたことは明らかでした。彼の作品を自分のコンピュー ターのモニターをとおして見ましたが、すぐに彼が便利堂に素晴らしい貢献をするだろうと確信しました。

マイケル・ファミゲッティ/Aperture Magazine エディター

ハリバンアワード 2017 の応募作品の審査はとても楽しむことができました。世界中の写真家たちが応募 してくれた幅広いプロジェクトに感銘を受けたばかりか、異なったスタイルやフォーム、そして幅広いアイ デアやアーティスティックな戦略が感じられました。応募作品を見て思ったことは、写真というのはいかに 豊かで柔軟な表現媒体であるかということ、そして写真家たちが自分の作品をより理解してもらうために 様々な新しい手法を探し続けているかということです。便利堂のコロタイプ工房は、まさにユニークなプロ セスに取り組む機会を提供してくれるでしょうし、デジタルの時代に生きている今の状況で、触る感覚や
物理的な側面について考えるといった特別な機会を提供してくれるはずです。いろいろな手法がある中、 便利堂の職人と作業し、共にイメージを作り上げることは刺激的な冒険をもたらすに違いありません。

最優秀賞者とのインタビュー


2016年の審査員は、ブラジルの写真家Claudio Silvano(クラウディオ・シルヴァーノ)さんの作品を最優秀賞に選びました。シルヴァーノさんは、京都で二週間、コロタイプの熟練技術者たちと過ごし、そこで作成された作品は2017年4月に開催されるKyotographie(京都国際写真祭)のアソシエイトプログラムとして展示されます。ビデオでは、シルヴァーノさんが彼の便利堂アトリエでの作品作りの体験を語っています。